CINEMA 2019.10.04

映画『ホームステイ ボクと僕の100日間』原作者・森絵都×監督×キャストによるオフィシャル対談が実現!

明日10月5日(土)より公開となるタイ発の青春ファンタジー『ホームステイ ボクと僕の100日間』。本作は直木賞受賞作家の森絵都が1998年に発表した青春小説の金字塔『カラフル』を、バンコクに舞台を移して映画化したものだ。

 今回、パークプム・ウォンプム監督、主演のティーラドン・スパパンピンヨー、ヒロインを演じたチャープラン・アーリークン(BNK48)が来日し、原作者の森絵都と初の顔合わせとなる対談が行われた。

本作は、ひょんなことから自殺した高校生ミンの肉体に“ホームステイ”することになった通称"ボク"。ミンの自殺の原因を100日間で見つけ出さないと、“ボク”の魂は永遠に消えると告げられ、新生“ミン”としてもう一度人生をスタートさせるといったストーリーだ。

小説の映画化の企画から10年近くの時間を経てついに完成した映画に感動したという森と、念願の原作者に会えて興奮冷めやらぬ監督・キャストの喜びが伝わる内容となっている。
 
―森絵都さんは、本作をご覧になっていかがでしたか?

森:タイが舞台なので、文化的な違いはありますが、親子や男女の間にある愛情、葛藤といった人間の心の動きは万国共通だと感じました。自分が原作者であることを忘れて、映画にのめり込んでしまったほどです。

―森さんの感想を聞いて、いま監督はどのように感じていますか?

監督:映画を制作している間、「森さんだったらどう思うだろうか?」ということをつねに意識して進めてきたので、そのように言っていただいてすごくうれしいです。監督としても、やっと気持ちが楽になりました。改めて、この小説を書いてくださったことに感謝したいと思います。

―日本の小説がタイで映画化されることはあまりないことですが、タイで映画化されると聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?

森:日本国内でも映画化は難しいことなので、とても驚きましたし、光栄なことだと思いました。ただ、企画書をいただいたのは10年近く前のことでしたので、この話はなくなったのかなと思ったことも何度かありました。根気強くこの映画を作り上げていただき、いまはうれしい気持ちでいっぱいです。

―監督は森さんと会える日をずっと心待ちにしていたそうで、かなり緊張されているようですが、いまの心境を教えてください。

監督:すごく緊張していましたし、いまでもまだ興奮が止まりません(笑)。僕はこの企画に参加することになってからは、ほかの仕事は一切せずに、僕の1分1秒すべてをこの作品のために捧げて精いっぱい取り組んできました。タイの文化に合わせてアレンジしつつも、小説の“心臓”の部分は変えないように苦労しましたし、森さんをがっかりさせたくなかったので、いまはうれしくてしょうがありません。

―森さんからご覧になって、演出面で印象に残っていることはありますか?

森:私は年齢的にも、主人公ミンのお母さんに感情移入しながら観ていました。彼女は母親としては過ちを犯したかもしれないですが、すごく家族を大事にしている人ですよね。というのも、最後に部屋のなかを映しているシーンで、キッチンに包丁が4本置いてありましたが、家族を大事にしない人は包丁を4本も持っていないからです。そういうのを見ると、彼女は彼女なりに家族を思っていたことが映像を通じて伝わってきました。小説の場合、すべてを文字にしなければならないのでさりげない含意が難しいのですが、映画では声に出さなくてもこういったことを表現できるんだというのを改めて感じることが出来たシーンです。うちには包丁が2本しかないので、愛情においてはミンのお母さんに負けた気がしています(笑)。

ティーラドン:包丁が4本あったというのは、いま初めて知りました。

チャープラン:本当に細かいところまでご覧いただいているので、驚いています。

監督:キッチンに関しては、美術監督による工夫ですが、ラストで音もなく部屋だけを映した意図としては、家族と母親がお互いを思い合う愛が溢れていることを表現したかったからです。



―森さんから見て、主演のジェームズさん(ティーラドンの愛称)とチャープランさんの演技はいかがでしたか?

森:サスペンスタッチで始まった物語がだんだん心理ドラマへと変わっていき、ミンの表情も非常に豊かに変化していったので、ジェームズさんにとってはすごく難しかったと思いますが、胸に迫るリアルな演技をしてくださったと感じました。チャープランさんは、ちょっと大人びた優等生をチャーミングに演じてくださったと思いますし、感情を吐き出すシーンも素晴らしかったです。

―おふたりも森さんと初めて会われてみて、伝えたい思いはありますか?

ティーラドン:僕も森さんの小説が大好きなので、このメッセージを観客に伝えたいと思いましたし、「カラフル」の一員になることが出来て光栄です。僕にとっては初の主演作で、全編通して演技力を試される作品でしたが、原作者の方からほめていただけることは、何よりも最高の言葉です。本当にありがとうございます。

チャープラン:そんな風に言っていただいて泣きそうなのでうまく言えませんが、心からうれしく思っています。この作品で初めて演技に挑戦したこともあり、撮影中は人生でも大変な時期でしたが、いまは報われた気持ちです。この作品で演じるチャンスをいただけて、幸せでした。

―原作ファンや観客に向けて、森さんからメッセージをお願いします。
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森:設定や背景は違っても、その奥にある普遍的なテーマにおいて、この小説は原作にとって二卵性の双子のような存在だと思っています。しかも、私が「カラフル」を書いてから20年が経っていて、この小説は立派に成人して一人歩きをしているので、むしろ原作との違いを楽しんでいただきたいです。形は違っていても、繋がっているところがあるので、ぜひ先入観を持たずにご覧ください。

原作者の森ですらのめり込んでしまったという映画の出来栄えは、是非とも劇場で。


ライター:コヤマ ムサシ(YES!!!!編集部)