CINEMA 2019.07.30

【レビュー】蒼井優が受け止めた池松壮亮の”熱量”、君なら? 映画『宮本から君へ』

天才漫画家 新井英樹作品の映画化は、本作で2回目となる。

どれも衝撃的な内容の新井作品を映像化して、そのエッセンスをきちんと観客に届けるなんて至難も至難、しかもそれがよりによって代表作の「宮本から君へ」だとしたら。。。

そんな一抹の不安を、主人公の宮本のエネルギーそのままに、名監督と名キャストがいとも簡単に吹き飛ばしてしまった。過去に原作の漫画を読んだときにページからあふれ出ていた熱量が、今度はスクリーンの大画面狭しと動き回り、広がり、否応なしにぶつかってきて、あっという間に涙腺のダムは決壊。
傑作漫画の映像化作品もまた、傑作だったのだ。
 
真っすぐでパワフルだけど不器用なサラリーマン・宮本(池松壮亮)と、男運はないが芯のある姉御肌のヒロイン・靖子(蒼井優)。2人の希望にあふれた幸福の絶頂と、絶望的な不幸のどん底、そのあらゆる場面で2人が互いにかけ合い、また吐き捨てるように浴びせる言葉の数々が、聞いた人間の喜怒哀楽の感情を湧き上がらせずにはいられない。

特に、胸にナイフを突き立てるかのような攻撃的な言葉たちの応酬(いやホントに、どんなラップバトルでも敵いません…)は、それがどんなに耳障りで、鋭い痛みを伴うものであったとしても、目を見開いて耳を立てずにいられないのは、どの言葉も1つとして薄っぺらさとは無縁で、言葉を放ったその人間の血潮というか存在、命そのものだから。

2人は相手のどんな言葉からも逃げずに正面から言い返す、それは相手の存在から逃げずに向かい合うということ。
 
当時まだ若く社会人でもなかった自分は、原作のページを手を震わせながらめくっていたのを覚えているけど、
大切な人のため?いや、違う、自分のため、自分であるため、摩擦や争いを微塵も避けることなく、危なっかしさと不器用さ全開で突っ込んでいく(イノシシでももっと器用な気がする!)自己中な宮本の言動が、今ではもう宮本らと同じ社会人になっている自分に対し、昔より遥かにリアルな形で何度も心に突き刺さった。
 
やっぱりキャストが素晴らしい。これは池松壮亮しかいなかったな、と思ってしまうほどの最高の宮本像はもちろん、
何と言っても蒼井優が演じる靖子。
そして、役が憑依した蒼井優と互角にやり合える人物なんてそういないと個人的に思ってたところ、「なるほど、『宮本浩』というキャラクターがいたか…」と鑑賞後に妙に納得してしまった。
 
原作が刊行された1990年代初頭、作品に対する好き嫌いが大きく分かれ、”宮本みたいな男は暑苦しい”と嫌いな男ワースト1位にも選ばれたことがあるという話を最近知った。
世間の多数派はやっぱりそんなものなのか、、、と寂しさと違和感を覚えたけれど、そんな原作を以前からバイブルのように慕い、こうして映画化された本作に再び共感して感銘を受けている自分は、もしかしたら十分に「暑苦しい男」なのかな・・・?と少し心配にも(名前がまず暑苦しいんですが)。
 
そういう意味で、原作刊行から20年以上が経った今、人々がこの映画を見て何を思い、どう感じるかには少し興味がある。
いずれにしても、おそらく今年の夏の気温より熱い、宮本からの「熱量」、受け取って間違いはない。

公式サイト  :miyamotomovie.jp

9月27日(金)全国にて公開
 
映画『宮本から君へ』 あらすじ

文具メーカーで働く営業マン宮本浩(池松壮亮)は、笑顔がうまくつくれない、気の利いたお世辞も言えない、なのに、人一倍正義感が強い超不器用な人間。会社の先輩・神保(松山ケンイチ)の仕事仲間である、自立した女・中野靖子(蒼井優)と恋に落ちた宮本は、靖子の自宅での食事に呼ばれるが、そこに靖子の元彼・裕二(井浦新)が現れる。裕二を拒むため、宮本と寝たことを伝える靖子。怒りで靖子に手を出した裕二に対して、宮本は「この女は俺が守る」と言い放つ。この事件をきっかけに、心から結ばれた宮本と靖子に、ひとときの幸福の時間が訪れる。ある日、営業先で気に入られた真淵部長(ピエール瀧)と大野部長(佐藤二朗)に誘われ、靖子を連れて飲み会に参加した宮本は、気合いを入れて日本酒の一升瓶を飲み干し、泥酔してしまう。見かねた大野が、真淵の息子・拓馬(一ノ瀬ワタル)の車で送らせようと拓馬を呼びつけた。そこに現れたのは、ラグビーで鍛えあげられた巨漢の怪物だった……!泥酔する宮本と、宴会を楽しむ靖子、二人の間に、人生最大の試練が立ちはだかる—。
究極の愛の試練に立ち向かうべく、愛する人のため宮本浩が"絶対に勝たなきゃいけないケンカ"に挑む!

■原作  :  新井英樹 『宮本から君へ』 百万年書房/太田出版刊
■監督  : 真利子哲也
■脚本  : 真利子哲也、港岳彦
■出演  : 池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生
       星田英利、古舘寛治、ピエール瀧、佐藤二朗、松山ケンイチ
■主題歌 : 宮本浩次『Do you remember?』 プロデュース:横山健&宮本浩次(ユニバーサルシグマ)
■配給  : スターサンズ、KADOKAWA


ⓒ2019「宮本から君へ」製作委員会
 

ライター: 毘沙門天華男 (フリーライター)

 
 
MUSIC 2019.07.25

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11月に公開される日中合作の『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』は、プロデューサーに『フェイス/オフ』『M:I‐2』『レッドクリフ』シリーズなど世界的大ヒット作を多く手掛けるテレンス・チャンを迎え、ヒマラヤ救助隊「Wings」を率いる”ヒマラヤの鬼”と呼ばれる隊長・ジャン(役所広司)が、標高8848M/氷点下50℃という過酷な条件下の世界最高峰・エベレストを舞台に、圧倒的スケールと映像美で贈るスペクタクル・エンタテインメントだ。 そして今回、本作の日本語吹替版主題歌が、今なお日本の音楽シーンをリードし続けるロックバンド・GLAYの書下ろし新曲『氷の翼』に決定した。 作詞・作曲を担当したTAKUROは「過酷な運命から目をそらさず受け入れないといけないし、それでも人は自然の一部として生きていかなければならない、と言う事を意識して制作しております。」とコメント。 印象的なピアノソロで始まるイントロとそこに重なる高音ボイス。サビではエベレストの銀嶺を飛翔し、舞い上がるようなフレーズで高揚感を最大限に煽る。アクション要素と人間ドラマ、映像美といった本作の魅力を見事に融合させ表現した楽曲で、25年もの間、第一線で活躍し続けるGLAYの真骨頂がいかんなく発揮されている。 公式サイト : http://over-everest.asmik-ace.co.jp/   映画『オーバー・エベレスト

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